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言語と認知発達段階の関係を解説!【言葉の力が子供の成長に与える影響】(第一部)

田渕 愛奈講師兼教材開発アシスタント / 英語の先生
更新日: 2023年8月1日
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英語教育って幼少期からやる意味あるの?

答えとしては、YesとNoです。

リサ先生としての答えは「そりゃ、もちろん!幼少期は言語習得の敏感期と呼ばれる時期であり、言語を自然に習得する能力が最も高まってて、幼少期に英語教育を始めることで、子供は自然な形で英語のサウンドやリズム、インプットとアウトプットのパターンを身につけることができるんよ。大人になると“考える”から、子供のように素直に聞き入れて、発音するのが難しいんよ。更に、幼少期から英語の音を聞き、発音を練習することで、子供の発音やリスニングスキルが向上するんよ。言語のサウンドパターンに慣れることで、将来的により自然な英語の話し手としての能力を発展させることができるんよ!」とまあ、営業のテンプレートですかと言わんばかりの内容ですが、個人としての答えは「いや~、どうやろね。別にしなくてもええんちゃう?日本におる限りは別に使わんし、困らんやろ。文法は学生時代に習うし、テストもやらされるから知識はあるやろ?幼少期からやっても、やらんくても、後10年くらいはそこまで大差ないと思うで。やりたいと思う人がやればええんちゃう?人間、やる気が途絶えない限り大抵の事は努力すれば報われると思うで。」という具合に、これを表に出していいのかとヒヤヒヤしますが、正直に答えると2つの答えになります。 天使と悪魔のような会話ですが、私はこのブログで子供の発達の段階で、英語を始める適切なタイミングをいろんな文献を読みあさり、私の考えをまとめました。

脳の世界を解き明かす【Piaget vs Vygotskyの理論対決】

Photo by Picsea on Unsplash

言語と認知発達段階の関係を詳しく見ていく前に、発達理論の代表であるピアジェとヴィゴツキーの理論について先に紹介していきます。因みにこの二人はどちらも学習理論に大きな影響を与えた学者で、教育学の中で必ず出てくる人たちです。私も大学でお勉強しました(笑)

まず、二人の共通点と違いについて簡単に説明していきます。共通点としては二人とも「子供など個人の発達に感心を持っている」、「子供達は能動的に学習しており、主体的な役割を果たす」と考えられています。 世の中の学習理論の中には、反復することで学ぶという行動主義という考え方など、あまり子供たちの主体性に重きをおいていない理論もありますが、この二人は子供達の主体性に重きを置いています。こどもが単に相手の言ったことを受容するだけでなく、能動的に学習に関わっているということです。反対に、二人の相違点はピアジェの場合、構成主義の立場でこどもの頭の中の認知的発達に着目しており、ヴィゴツキーは社会構成主義の立場で、社会の交流を通しての発達に着目しています。簡潔に述べると、個人の頭の中の認知的発達に注目しているか、人との関わりに注目しているかというところが大きな違いです

ここで、二人の考え方を詳しくみてみましょう。ピアジェの認知発達の概念は「こども達は、育った環境から自ら知識を構築していく力がある」と提唱しています。更に、4つの概念を提示しています。「シェマ」(shema),「同化」(assimilation),「調節」(accommodation),「均衡化」(equilibration) の4つの概念を提示しています。シェマとは認知の構造です。例として、子供が“リンゴ”を見たとき、両親を通じてそれがリンゴであること、リンゴは果物であることを知識として得る。と同時に、子供は自分の五感を通じて、“赤い”、“甘い”ことなどの情報を取り込み、それらを統合していく。こうした過程を通じて、「リンゴは果物である」という知識と、リンゴは赤かったり甘かったりと、視覚や味覚などの情報を統合し、概念化していく。知識と概念が合わさってシェマが形成されます。その後、スイカが果物で、赤く甘いものと、“同化“していったり、パイナップルは黄色で甘酸っぱかったりと、既存のシェマにない情報を処理するといった“調節“という過程も加わり、同化と調節がバランス良く繰り返されるいった”均衡化”が起こり、どんどん“シェマ”が大きくなります。このようにして、人間は知能を発達させるが、大人になるにつれてそれが難しくなる。子供は調節を通じて、シェマを拡大していくが、これまで培ってきたシェマ(既存)にあわないものが情報として提供された場合、それを大人は受け入れない場合がある。 “リンゴは果物である」と「リンゴは赤い」は同じではない。赤くないリンゴ、青いリンゴ、色落ちしたリンゴ、小さいリンゴ、いずれもリンゴだし、新しい色のリンゴが生み出されたとしても、それもリンゴ。「常識のアップデート」を怠ってはいけないのです。 一方、ヴィゴツキーによる発達理論は社会的相互作用に注目したものでした。コミュニケーションというのは話し手と聞き手という2つの役割があるものの、それぞれは役割を交代しながら相互に影響を与え合うものです。

言語の力で成長する子供の内言と外言【言語発達の謎に迫る】

Photo by Sebastian Pandelache on Unsplash

そして、そのような社会的な関わりを通じて、発達に必要な情報が提供され、それが個人の中に取り入れられる(内化される)ことで新しい認識の形成が促進されるという理論を提唱しました。なお、発達において重要なコミュニケーションを行う相手は、同年齢の仲間だけでなく、大人や年長者も含まれており、幅広い人々との関わりを通じて子供は認知的な発達を遂げるのです。社会文化的発達理論において、ヴィゴツキーは人間の認識を人間の発達が歳を重ね、大きくなることで自動的に進むものではなく、教育的な働きかけに対し、子供は積極的にそれを取り入れようとする内化を行っていると主張したのです。そして、人間の認知発達を促進するないかと関わるものとして発達の最近接領域を提唱しました。子供は様々な課題に取り組む中、課題の難しさはそれぞれであり、次のように発達水準を分類することができます。

1.子供がアドバイスを受けても出来ない段階

2.子供がアドバイスを受ければ出来る段階

3.子供がアドバイスを受けなくても出来る段階

このうち、子供の発達を最も促すのは2番目の「子供がアドバイスを受ければ出来る段階」です。 何事も難し過ぎてもダメだし、簡単過ぎてもダメですが、子供が一人で取り組む場合には難しいが、大人など周囲の人のアドバイス、サポートがあれば何とか出来るような難しさの内容は、繰り返し取り組む事で徐々に自分でできる課題へと変わっていきます。生徒さんのレッスンの際にカード、フレーズなどが思い出せなくても、最初の音をヒントにサラッと口から出てくれると、あともうちょっとと感じます。このように、それぞれの子供の発達水準に適切な教育的な働きかけを行うことができるかどうかによって子供の発達は変化していくとされています。コミュニケーションの重要性を強調するヴィゴツキーは、コミュニケーションにおいて使用される言語にも注目していました。子供の発達を考えるうえで重要となってくる概念に内言と外言があります。

外言→音声として発せられる言葉。コミュニケーションツールとして用いられる言語

内言→思考の道具として用いられ、音声化されない言語

自己調整の言語と他者への伝達の道具

Photo by TIm Gouw on Unsplash

緊張をほぐすために自分に話しかけるという行為はまさに内言であり、それは思考や自己調整に大きく関わっている言語です。ピアジェも内言と外言について注目していますが、幼児は認知機的能力が不十分なため、他者に伝えるための言葉を適切に使用できず、それによって自己中心的な言葉を発する(独り言)と考えたのです。そのため、ピアジェの想定した言語発達の過程は、思考の道具として内言が確立された後、さらに他者視点を獲得するという認知的発達を遂げることで外言がかくとくされるという、内言から外言へ進む発達過程を想定したのです。

一方でヴィゴツキーは、幼児が周囲の人々とのコミュニケーションの中で、まず外言が獲得されていき、その後、外言が子供に取り入られ内化され思考の道具としての内言が獲得されていくと考えました。そして、幼児が話す独り言は自己中心性からくるものでなく、内言の成熟が不十分で、外言と未分化であるために、音声を伴なわず使用される内言に音声が付随してしまうことにより独り言が生じると考えました。ピアジェは、年齢ごとに認知的発達段階を設ける理論を提唱しましたが、このように年齢を重ねることで自然に発達が進んでいくという発達観をもっています。そのために、考えるという認知的発達が出来るようになってから、その思考を使って話し始めるという流れを想定したのです。これに対し、ヴィゴツキーは社会の関わりを重視した発達観を持っており、そのため、子供の心身、言語発達は子供一人の力だけで勝手に進んでいくのでいくのではなく、親子や友人など周囲の他者との関係の中で言語能力が培われ発達が進んでいくという面を強調したのです。

※ このシリーズの第二の記事はこちらからご覧いただけます


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